17.魔物を倒すための作戦実行!

小説
主要な登場人物
レイト 
 雷を操れる少年
ルアル 
 魔法を使う魔術師の少女

リモク村の登場人物
ルシィ 
 リモク村の宿屋を営む女性。
スバン
 ルシィのお父さん。
ニンバス 
 リモク村の木こりをやっている男性。
 実はルシィの幼馴染

魔物
ゴブリン
 基本はレイトと同じくらいの小さい魔物。しかし力はものすごく強く、ただの大人でも引けを取らない。大きいサイズもおり、そちらは力があまりにも強く成人男性が立ち向かっても、すぐにやられる。

大きな魔物
 大きなゴブリンよりもはるかに大きい3メートルはある魔物。
見た目もゴブリンとは全く違う。お腹は大きく丸く、その中央には大きな口がついている。またお腹の上には小さい顔がある。手は太く地面につくまで長い。大きなゴブリンを片手で握り潰すことまでできてしまう。

前回のあらすじ
ルシィに無事に会えた一行は、出口に向かおうとするも、レイトは大きな魔物を倒すため1人洞窟内へと戻る。
それを見たニンバスも覚悟を決めレイトの後を追う。

先に巨大な魔物の元へと向かったレイトは、暗闇の中を自身の雷で灯した木の棒を持って、歩いていた。

その火は、ルアルの与えた魔術の光よりも小さく、自身のほんの手前を照らすほどでしかなかった。

そのため慎重に歩きながらも、剣を握り、いつでも魔物が襲ってきていいように準備して、進んでいた。

気づけば足音が聞こえなくなっており、魔物は歩くのをやめているようだった。

レイトは心臓をドクドクと鳴らしている。

ルアル達の前で倒すと、話したが、正直勝算が思いつかないでいた。

(さっきの雷の力ならあいつを倒せるか…)

レイトはそう思いながらあの力を思い出した。
大きなゴブリンを倒した時に使った雷の力、あれのおかげで雷の力の使い方がなんとなくわかった気がする。

ただあの強力な一撃を放つのには、少しの時間が必要なのと、後2回も放てなさそうなところに問題があった。

それを加味した上で、それを当てるスキを作る必要がある。それらを考えた上でレイトは思う。

「もしかして無理か…?」

思うつもりが、言葉にして発してしまった。

疑念と後悔が脳裏に浮かんでくる。
しかしそれらを振り払うかのようにすぐさまレイトは頭を振った。

(ちがう!ここでどうにかしてあの魔物を倒さなきゃダメなんだ)

あの魔物さえ倒さなければ、何も解決しないような気がする。それだけはダメだと自分の心の中で強く思っていた。

暗闇の中、微かに照らされている足元を見ながら夢中に考えごとをしていると、何かにぶつかって倒れそうになる。

「う…なんだこれは」

前を照らす。
壁とは違い、ブニブニとした触感。
これはと小さな光を上下左右に動かして、見つめてみるとレイトはそれが何かを理解した。

目前にあるのが皮膚であり、巨大な魔物の皮膚であることに気づく。

(いた!!)

レイトは急いで距離を取ろうと下がり、片手で剣を前に構える。
心臓が高鳴り、奥歯を噛み締めて、戦闘準備を整えるが、レイトはふと疑問に思った。

「…‥気づいてない?」

そう。
よく聞くと、どうやら寝息を発している。

「グビークビー」

呆気に取られたレイトは、少し肩の力が抜けて、気が落ちそうになる。

しかしこれは絶好のチャンスと思い、すぐさま火のついた木の棒を地面に突き刺すと、レイトは、両手で剣を構える。

(よし!行ける!!)

両手で振り上げ、一つに集中するそして雷の力を発しそうとした瞬間。

「おーい!!レイトくん!!大丈夫かあ!!」

ニンバスが大声を上げて走ってきていた。

それを聞いて、レイトは肩に力が入る。
一瞬で緊張感を取り戻し、大声で叫んでしまう。

「ニンバス!!静かにしてくれえ!!!」

ニンバスよりも大きな声で叫ぶレイト、その大声は誰よりも大きな声で叫び、洞窟内を響かせた。
それはきっとルアルの耳にも入っていたかもしれない。

「………あ」

レイトはついやってしまった。
その大声は、巨大な魔物の眠りを妨げる行為であったと、後から気付いた。
その瞬間。

「ブゴオオオオオオオオ!!!」

大きな怒号が響き渡った。
それはレイトの声よりも遥かに大きく、紛れもなく巨大な魔物の鳴き声だった。

その大声を間近で聞いていたレイトはあまりの大きさに耳を咄嗟に塞いでしゃがみ込んだ。

巨大な魔物は後ろを振り返るために、大きな手をレイトの元へと振り落とす。

たまたまレイトの横に手が置かれ、その時の風圧と共に、すぐさまレイトは後ろに飛び込んだ。

それと同時に火を灯した木の棒は、魔物の振り落とした風圧で消し飛び、周りは真っ暗になってしまった。

それに焦るレイトは咄嗟に後ろから松明の火を掲げて追いかけてきたニンバスのもとへと走り出した。

ニンバスは、今の叫び声に驚いて立ち止まっていた。
魔物がこちらへとやってきているかのように足音が聞こえる。

心臓がドキドキとしながら、待ち構えていると、すぐさま暗闇からレイトが飛び出してくる。

「ニンバス!!」

それに驚いたニンバスは、後ろにのけぞりそうになる。

「うわぁ!!…レイトくんだったか!」

ニンバスは少し安堵したかのようにため息をついた。
だが、レイトは激しく動揺していた。

「なんできたんだ!ルアルとルシィと一緒にここから出るんじゃなかったのか!」

それに対してニンバスは言った。

「俺もレイトくんと戦うことに決めたんだ」

レイトはそれに対して目を丸くし驚いていた。その後にレイトは何か言いたげそうに、口を開こうとする。
だがその前にニンバスをレイトに向けて頭を下げた。

「すまない。きっと俺はこの魔物を倒せない。それでもレイトくんのサポートをさせてほしい」

そうして一間をおいて言った。

「ルアルちゃんと約束したんだ。レイトくんが無茶をして倒れても俺が必ず背負って生きて返すと」

そうして一呼吸して言う。

「だから、思いっきりやってくれ!!」

突然叫ぶニンバスの謝罪とお願いに、レイトは頭が混乱しそうになった。

それでもレイトは、ニンバスの言いたいことがわかった気がする。

「わかった!ニンバス」

ニンバスの本気な態度を見てレイトが言う。

「ニンバスがいるなら俺は思いっきりやる!!頼んだ!!」

ニンバスは、それを聞いて拳を強く握りしめた。

「ありがとうレイトくん」

顔を上げたニンバスは、松明を構えた。

そうしてレイトの隣にニンバスは来ると魔物の足音が聞こえる方へ向く。
そこでレイトがある作戦を思いついた。

「ニンバス!作戦がある!」

それを聞いてニンバスは、頭を下げてレイトの口元に高さを合わせた。

「どう言った作戦だ?」

「それは…」

魔物の足音がすぐ近くなる。
そこでレイトはニンバスに手っ取り早く作戦を話す。

「……わかった」

そうニンバスが言うと、覚悟を決めるように、松明を握りしめた。
それを見てレイトも、覚悟を決めた。

「じゃあ、頼んだぞ!ニンバス!」

レイトは暗闇の中へと消えた。

それからニンバスは、また息を吸うと、次は大声で叫んだ。

「こっちだあ!!化け物!!!」

ニンバスは、自分の居場所を知らせるように火を振るう。
そうして道端に落ちている木材を見つけては火をつけるために松明を向けた。

暗すぎる洞窟内を少しでも明るくするためとはいえ、洞窟内がジメジメしていたこと、血に濡れていることもあり木があまり燃えない。

それでもすぐさま別の木材に火をかざしながら、右の方へと歩く。

暗闇からまた一歩一歩とニンバスの方へと寄ってくる足音が聞こえる。

ニンバスの心の中では胸が大きく高鳴っていた。

暗闇の中、魔物の姿が見えない。
だからこそいつ飛び出してくるのか、わからない。
それでもある程度後ろや左右に動きながら、ニンバスは魔物を自分に引き寄せ、あたりを少しでも照らそうと頑張っていた。

(レイトくん…大丈夫か…)

恐怖に感じていながらもレイトの心配をしていた。

この作戦は、レイトが魔物の位置を把握することが鍵になる。

そのためには周りを明るくし、自分のもとへ魔物を引き寄せる必要がある作戦だ。

だが現状は残念ながらあたりの木材に火が付かず、暗いままだ。

それに気づいたニンバスは、動きを止めて、松明を頭上で振るった。

「ここだあ!ここにいるぞ!」

心臓が高鳴る。

魔物の足音は、かなり近くなっている。

すると暗闇から大きな右手が現れ、ニンバス目掛けて、振り落とされた。

ニンバスは、咄嗟に左の方へと、倒れるようにかわした。

ズシン!と隣で音を立てる。
どうやらギリギリのところで交わすことができた。

風圧があったものの、松明は消えることがなく、ニンバスは横に寝転がったまま隣に松明を向けると、そこに置かれた大きな手のひらを見た。

それは人間1人つかむのに充分な大きさだ。

すると置かれた手を起点にこちら側に這いずるような音が聞こえた。

松明を目の前にやると、そこには今にもニンバスを食べようと四角い歯をずらりと並べた魔物の大きな口が目前にある。

ドクンドクンと先ほどよりも一層大きく心臓が高鳴る。
ニンバスはあたりがどうなっているかすら入ってこない。
目を大きく見開きただ唖然としながら、恐怖にやられていた。

巨大な魔物は地面につくほど長い腕、大きな口がついた大きなお腹、足は太く短い、そうしてまた上には小さな頭がついている。

なんともまあヘンテコな姿だが、それが一層不気味さを増させる。

ニンバスは、体の震えが止まらない。
魔物の口元が近づいてくると、不気味なほどに綺麗に生え揃った歯が一層目の前にくる。
そうして口が少し開く。

そこから悪臭が流れ込み、ニンバスは頭がふらつきそうになる。

魔物はニンバスを食べようとしているかのように、口を開き始めた。
震えて何もできないニンバスだったが、それでも自分の役割を考え、レイトの一言を思い出した。

頼んだぞ!ニンバス!

その一言で自分の役割を思い出した。

(自分の恐怖と戦え!!!)

そう心で呟き続け、ニンバスは叫ぶ

「うおおおおおおお!!」

松明を巨大な魔物の方へと向ける。

すると、開きそうだった口元をすぐさま閉じると、少し重い足を上げて、後ろへ下がる。その次に魔物は左手を上にかかえ上げ始めた。

払い除けようとしていると思ったニンバスは、ひたすらに松明を揺らして、あたりを照らした。

(レイトくん…たのむ!!)

そう思った時、レイトの声が聞こえた。

「ニンバス!!ありがとう!!」

そうして雷が走っているかのような音が聞こえるとレイトはすぐさま続けて言う。

「あとは……まかせろ!!!」

次の瞬間、洞窟内に落雷のような音が鳴り響き、それと同時に魔物が叫び始めた。

「グガアアアアアア!!」

レイトが雷を溜めた一撃を魔物に当てることができたのだった。


どうも新年あけましておめでとうございます。

年内に今の話を終わらせる予定でしたが、残念ながら無理でした。

今年は絶対にある程度進める予定です。
よろしくお願いいたします。

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