14.ルアルの喜びとレイトの危機一髪!

小説
主要な登場人物
レイト 
 雷を操れる少年
ルアル 
 魔法を使う魔術師の少女

リモク村の登場人物
ルシィ 
 リモク村の宿屋を営む女性。
スバン
 ルシィのお父さん。
ニンバス 
 リモク村の木こりをやっている男性。
 実はルシィの幼馴染

魔物
ゴブリン
 基本はレイトと同じくらいの小さい魔物。しかし力はものすごく強く、ただの大人でも引けを取らない。大きいサイズもおり、そちらは力があまりにも強く成人男性が立ち向かっても、すぐにやられる。


前回のあらすじ
ルシィを助けるべく、レイトとルアルとニンバスは、魔物の住処の洞窟へと進んだ。ゴブリンが全く出ないと思いきや、今までとは違う大きいゴブリンが登場。一体目は、ルアルの魔術によって撃退するも二体目が登場し、レイトが引き受ける形で戦う。ルアル達はその間にルシィを助けるためさらに奥へと進む。

ルアルとニンバスは、先に進む。

進むほど、ゴブリンが燃えた火とレイトの光がうっすらと小さくなる。
ここは奥にも広い。
それでもルアルは、ルシィの声が聞こえる方向に走る。
ルアルの心臓は高鳴っていた。

(ここで、もう一体のゴブリンが出て来たらマズイ…!)

そうルアルが考えるのは、自分の魔力が予想以上に消費してしまっているからである。

魔術を使える回数はもう限られており、今まで有効的だった魔術が使えない絶望的な状況になるからだ。

ルアルの考えでは、ルシィを助けて帰るまでにある程度の魔力を残すことにしていた。

ただ現状は、もはや限界に近い魔力を消費をしている。
その原因は、今日一日で、今までに制限していた魔術を多く行使しすぎたことにあった。

本来魔力量は、魔法世界と今いる騎士世界では違う。

魔法世界では常に100%の魔力を使用できるのに対し、騎士世界では条件によって最小で20%から最大80%の幅でしか魔力を使用できない。

このためルアルにとって、不慣れな世界での魔術の行使は、自身の魔力量の限界値という測定に失敗していた。
ルアルは歯を食いしばりながら、走り続ける。

「ここにいるわ!」

そう叫ぶルシィの声がだんだん近くなっていることに気づいた。
そうして進み続けると洞窟の壁際にぶつかり、そこには一つ大きな穴があいていることがわかった。

ルアルとニンバスは、お互いの武器になるものを持って、その穴の中へと入る。

穴の中を照らされると、中は今までいた場所とは違い広くはない。ただそこら中に人間の血や肉、骨が多く転がっている。

そしてその先には、壁際に寄りかかって座っているルシィがこちらを向いていた。

「ルシィさん!!」
「ルシィ!」

ニンバスとルアルは同時に叫んだ!

ルシィは、ルアルが来ていたことにすごく驚いていた。その後すごく安心したように、涙が溢れだしていた。

「ごめんなさい…私のために、こんな危険なところまで来てくれて」

そう謝ったルシィにルアルとニンバスは、顔を横に振っていた。

「気にしないでください!生きててよかったです!!」

ルアルは、すごく嬉しそうに言う。
正直ここまで来たもののルシィが生きている確証はほぼなかった。
だからこそ、ちゃんと生きて声を聞けたこと、無事に会えたことをルアルは喜んでいた。

それはニンバスも同じで、2人ともルシィの生存にとても安堵していた。

しかし喜びを、現状分かち合うほどの暇はない。

「早速だけど、早くここを出ましょう!」

ルアルがそう言うと、すぐさまニンバスは、ルシィの目の前で屈む。

「俺が背負って運ぶ。乗るんだ、ルシィ」

ルシィはそれに従って、ニンバスの背中に移ろうとする。

「うう…背中が」

動くと背中が痛む。
ルシィは涙を我慢しながら耐えていると、ルアルがそっと後ろに立って傷口に手を触れた。

すると魔術の光が輝きだした。
それを見たルシィは驚いていた。

「ルアルちゃん…?」

ルシィは不思議そうに言う。
ルアルは黙りながら、ルシィの傷を癒していた。
青白く輝く光に照らされるルシィ。
その光はどこか温かく、ルシィは傷の痛みがどんどん和らいでいくことに気づいた。

「これで大丈夫ですよ…ルシィさん…」

ルアルは疲れたように言う。
ルシィはルアルを見て、申し訳なさそうにしていた。

「ありがとうね。ルアルちゃん。無理してでも助けてくれて」

それに対しルアルは笑って答える。

「大丈夫です!早くいきましょう…!」

そう言うとニンバスはルシィを背負い立ち上がって、穴の空いた方へ向かう。
そうしてニンバスは言った。

「急いでレイトくんを助けてみんなで、この洞窟を出よう!」

それに対して、ルシィは驚いた。

「レイトくんも来ているの!?」

それに対して、ニンバスは頷いた。

「今ゴブリンと戦ってくれている。急いで、加勢しないと不味いかもしれない」

それにはルアルも少し不安そうにしている。

「私のためにみんなごめん…」

そう言うルシィに、ルアルは答える。

「いいんですよ!レイトは何があっても助けに行ってた!それに今も大丈夫ですよ!」

ルアルは、自分の不安な感情にも言い聞かせるように答えた。
ルアルもレイトが心配なのは変わらなかった。
早く助けに行こう。
そう考えているが、自身の力にも限界を感じていた。

それでもレイトとみんなでここから出ることを決意して、穴の方に向かうと、暗い洞窟のほうから轟音が鳴り響いた。
それはまるで雷が落ちたかのような音。

3人は驚いていた。

そして、その音を聞いたルアルは、立ち止まって思う。

(この音、もしかして…)

期待と不安、その両方の気持ちがルアルの心を駆け巡った。

少し時を前にしてレイトは、大きいゴブリンと戦っていた。

ゴブリンの攻撃は大振りで見破りやすい。

レイトはゴブリンが振る棍棒を、剣で受け止めようとせず、体を反らしてかわしていた。

なぜならゴブリンの力は強く、子供のレイトどころか、大人が受け止めようとしても、吹き飛ばされてしまうからだ。

そう考えたレイトは、受け止めるのではなく、攻撃をかわした後の隙を見て切り掛かることに決めた。

だが、思ったよりもゴブリンの振りが早い。

(くっ…なかなか隙がない…)

レイトは、間を取るために、少し後ろに下がった。

そして剣を構え直して考える。

(雷の力で動きを止める!!)

一つ深い呼吸をした後に、レイトは体に雷を発する意識をする。
全身が青白い光の線に包まれる。

ゴブリンは、それを見て驚くようにしていた。

しかし、その雷はすぐに消えてしまった。

レイトは未だこの力を意識してコントロールできない。

ルアルに教えてもらった雷を剣に集中する方法。
それをやろうとしても、うまいこと雷が扱えない。

「うう!」

レイトはうめき声をあげる。
一瞬の戸惑いがあったものの、すぐに消えた雷を見て、ゴブリンがすかさず襲いかかってくる。

「ガアアフ!」

振り上げた棍棒をレイト目掛けて振りかざした。

急な攻撃に反応が遅れ、レイトは剣でなんとか受け流すことに成功する。
そのまま横に移動し、振られた棍棒が鈍い音を立てながら地面にぶつかるのを見る。

その隙に横から剣を振るうも、ゴブリンは振り下げた棍棒をすかさず振り上げた。

(早い…!!)

剣はそのまま棍棒にぶつかり、レイトは剣を持った腕こと背中の方へ、のけ反る

「くっ!!」

脇腹が無防備になったレイトに向けてゴブリンは、すかさず棍棒を放つ。

当たれば完全に終わりだ。

レイトの頭にそうよぎる。
結局あの時と同じように、レイトは失敗してしまった。

村で初めてゴブリンを倒した時と同じ。

結局1人では無理だと、悲しさと悔しさでただ唇を噛むことしかできずにいる。
そんな中、走馬灯のように、あのゴブリンとの戦いの記憶が蘇った。

あの時はルアルがいたから助かったけど、結局1人では何もできなかった。

ルシィたちを救えない。
だけど、なぜかあの一瞬を思い出した。

ルアルに助けられた時のあの感覚。
あの時、ゴブリンに剣を振った時のことだ。
レイトはただ剣を振り下ろしたのではない。

あの一瞬雷を宿すことができていた。

まるで走馬灯のように巡る。
あの時の感覚を今まさに思い出した。

「あああああああ!!」

そう叫んだレイトは雷を全身から発する。

その発した雷に、ゴブリンの体が一瞬触れる。

「グガガガア!」

レイトの横腹を目掛けてとんできた棍棒ぎりぎりで止まる。
どうやら体が痺れて硬直したようだ。

レイトはその隙にあの感覚を思い出し、雷を剣に宿した。

バチバチと剣に雷がまとわりつく。

「うおおおおおおおお!!」

そのまま、のけ反った背中を元に戻す勢いで、ゴブリンに向けて剣を振り落とした。

それはゴブリンごと、いや地面ごと、轟音と共に叩き切った。

まるで雷が落ちたかのように雷音が洞窟内に鳴り響く。

一瞬にして振り下ろした剣の先では、ゴブリンは、真っ二つになって崩れ落ちていた。

真っ二つになった断面からは焼けた肉の臭いと煙が漂っている。

レイトは今の自身の力にひどく驚いていた。

「俺に…こんな力があったのか…」

死の間際だったからなのか、とてつもない威力に驚愕していた。その衝撃は、地面が深くまで割れると共に、ルアルの光の玉まで消しとばしていた。

ここまでの力を使ったせいか少し体がこたえてきている。

「連続して使うのは難しそうだな…」

そう一言呟くと、気を引き締め直して、ルアルたちを追いかけようとする。

暗闇の中、辺りを見回してみると、遠くに燃えたゴブリンの火が微かに残っているが見える。
今にも燃え尽きそうだが、あの火の方向からルアルたちが走った方向を確認する。
すると微かに青白い光が見える。

そこでとりあえず大声で叫ぶことにした。

「ルアル!!ニンバス!!大丈夫か!?」

すると少しの間をおいてルアルの反応が返ってきた。

「レイト?無事なの!?」

それに対して、レイトは嬉しそうに答える。

「俺はゴブリンを倒したぞ!!今そっちに行く!」

そう答えると、レイトは声の聞こえる方向に走ろうとする。

しかし、次の瞬間、暗闇の中から、とてつもない叫び声が聞こえた。

「グオオオオオオオオオ!!!」

それは今まで鳴いていたゴブリンとはまったく違う声だ。

レイトに新たな緊張感が走る。
得体の知れない恐怖に体が強張りそうになる。

それでも早くルアルたちと合流するためにレイトは走り出した。

ルシィはいっそのこと自殺しようか迷うほどに、精神的にも衰弱してました。
ギリギリセーフです。

最近は頻度高めに更新できてるので今後も頑張りたい。

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