4.レイトとルアルの旅!いきなり森で迷子!
レイトは、木の枝を握って、念じるように顔を歪めた。
すると木の枝は、先端近くをバチバチと音を鳴らして光出した。
「くっ……」
悔しそうにするレイト、これは自身の雷をコントロールする訓練だ。
ーーー これは今より前のレイトとルルテが旅に出た後のことである ーーー
「なあルアル、俺に魔術を教えてくれ」
「いいけどレイトのそれは魔術なの?」
「わからない」
レイトにとってこの力は生まれてから使えるものだ。
それゆえなぜ使えるのか全くわからなかった。
「まあいいわ」
ルアルは、一呼吸置いて細長い木の枝を拾った。
「魔術には、いろいろあるけど属性魔術と言われるものがあって」
木の枝を地面向ける。
「それはこの世界を構成した言われる火、水、土、風、雷を指す。これを自然の5属性と言い、レイトが使っているのが雷よ」
地面に向けた木を動かし、5属性についての文を描きながら答えた。
レイトは、その木の枝で文字を描く器用さに驚く。
「レイトはどうせ知らないから、魔法の基礎と魔術師についてを教えるわ」
ルアルは、そう言って地面にいろいろと書き込んでいく。
「まず魔法は奇跡的で神秘的な力であり、人の想いの結晶とも呼ばれているの。それを人間が扱えるようにしたのが魔術、そして魔術を使うのに消費するのが魔力よ!マナとも呼んだりするわ。魔力の容量は個人によって変わって、最初は魔力を養うことが大切なの。ある程度の魔力得てから普遍魔術と言われる魔力そのものを扱う魔術を習得し、次に5属性魔術の基礎を習得する、ここまでくれば魔術師を名乗ることができるのよ」
早口の説明をしながら沢山の量の文字や図を描くと、木の枝で描くのをやめた。
「どうわかった?」
ルアルは自信満々に聞くが、レイトは地面の文字が読めず話もよくわからなかった。
「うーん、わからない…」
ルアルはその場でガックリと倒れた。
「なんでこんな簡単に書いて、わかんないのよ………」
「と、とりあえず魔力が必要ってことだな!」
レイトがそう答えると、ルアルは、その場の気を取り直し、改めてレイトに話した。
「とりあえず……レイトのその力を私が初めて見た時はちゃんと魔力を見ることができたわよ」
レイトは目を丸くして驚いていた。
「え、俺にもちゃんと魔力ってんのがあんのか…!?」
驚くレイトにルアルは頷き答えた。
「だからこそ、私は最初に魔術だと思ったんじゃない」
なるほどと頷くレイトは、相槌を打った。
「だからもし原理が同じなら、こうしなさい」
すると持っていた木の枝をレイトに向けて先端だけ火を灯した。
「コントロールの練習よ」
そう言って燃えるスピードを変え、一瞬にして木の枝は、燃えつき灰へと変わる。
灰になった木の枝はルアルの手元からサラサラと流れていった。
「レイトは、見ていてコントロールが上手くできないでしょ…?これができるようにしなさい」
「おう、わかった」
それからレイトは、旅の間木の枝を拾っては雷の扱いの特訓をしていた。
そして日が落ちそうな時間になり、あたりは夕暮れの色へと変わりそうである。しかし、あれからレイトとルアルは、途方もなく歩き続けていた。
「ねえ、これほんとに地図あってるの?」
ルアルは自身の地図を握りしめ言う。
「わからない…」
レイトは木の枝を使うのをやめ、すかせたお腹を撫でながら言った。
「なんで、わからないのよ…」
ルアルは、ガッカリした表情でレイトを見た。
「貴方ね、旅してるのに地図読めないってどうなのよ」
ルアルはレイトの方に、顔を向け睨んでいるかの様に見つめてくる。
レイトは地図を無くしているのだが、実はあまり地図が読めなかったのだ。
「うう…少しは読める!
でも、こんな深い森に入ろうって言ったのはルアルだろ!」
ルアルは、誤魔化すように顔を前に向けて地図を読む。
ルアルは、王都への近道だと言って、深い森が続く道に入っていき、同じような道中で迷子になっていた。
するとルアルはレイトに呟く。
「わ、悪かったわね…」
それを聞いたレイトは、しょんぼりとしたように答えた。
「別にいいんだ…」
お互い少し気まずそうな雰囲気の中迷ってる道を進み続けている。
そこで、レイトはある考えが浮かんだ。
「そうだ!魔術で空を飛んだりできないのか?」
「そ…そんなことできるわけないでしょ…」
ルアルは速攻で否定した。
「そうなのか?」
レイトは不思議そうにルアルを見る。
「そうなのよ!空を飛ぶなんて、魔女になってもできる人なんて、ほとんど聞いたことない!」
レイトにとってよくわからないが魔術が色々と不便だと感じた。
「じゃあこの木に上がる魔術って何かあったりしないのか?」
「うーん………そういえば…」
少し悩んだ末にルアルは答える。
「あるのか?」
「私あまりやったことない」
そう言ってルアルは背を向ける。
「身体強化魔術、この世界の騎士が使う基本の魔術ね」
少し自信が無さそうだが、レイトはルアルの肩をポンと叩く。
「じゃあルアル頼んだ」
すると首を全開に横に振るとルアルは勢いよく話し出した。
「いや!私得意じゃない魔術はしたくない!」
そう言ってルアルは、そっぽを向く。
「なんでだよ!この状況を乗り越えることができるのはルアルしかいなんだぞ!!」
ルアルはそっぽを向いたまま黙っていた。
「ルアル頼む!ルアルしかいない!!」
レイトはルアルに叫ぶ。
「できる!ルアルならできる!!」
すると少しやる気が出たのかレイトをチラリと見る。
「じゃあ失敗しても笑わないでね…」
「うん、笑わない」
「頑張れルアル!頑張れ!!」
ルアルは背を向き膝を曲げる。
「高く飛ぶために足に集中して」
何かイメージトレーニングをしているのかルアルは目を瞑る。
その間レイトにも少し緊張が走った。
集中してるルアルすごい気迫を感じる。
そして一呼吸置いたルアルは目を開けた。
「飛ぶ!」
そう言ってルアルは一直線に飛び、木を越える高さまで飛ぶことができた。
「やったああああ!」
ルアルは少し笑顔になって、手を振っていた。
その下ではルアルに手を振りかえすレイトが、叫びながら喜んでいた。
「うおおおおおお!」
しかし、喜びも束の間、ルアルはそのままレイト目掛けて落下へ。
「きゃあああああ!!」
レイトはいきなり落ちてきたルアルに驚き、口を開いたままその場で固まった。
ドン!と大きな音を鳴らしレイトは下敷きになった。
「いてて……やっぱり難しい…」
ルアルは、少し落ち込んだ様子でいたが、レイトは下敷きとなり、バタバタと手足を動かしてた。
「苦しい」
そういうと、ルアルは恥ずかしそうに一言謝って、そっと立ち上がった。
「で、何かあったのか?」
レイトは気を取り直し、ルアルに聞く。
「うん、ちょうど向こうに村が見えた」
とルアルは村の方向に指をさした。
「よく見えたな…」
「まあちょうど飛んだ向きに見えたのと、これでも私目はいいから!」
蒼く輝く目をさらに輝かせて話した。
「そうなのか」
レイトは頷いて、その目をじっくりと見つめた。
(不思議だな)
レイトは疑問に思っていた。
初めて見る目の色の違いについては不思議だった。
レイトも含む今まで見た人の目の色は、オリーブ色に近い、くすんだ黄緑色の目をしている。
そのため青く輝く目を見るのは珍しいのだ。
見つめられたルアルは照れ臭そうにしながら顔を振る。
「…じゃあ行きましょう」
ルアルに答えるようにレイトも頷く。
「おう」
2人は指を指した方向へと歩き出した。
その後すぐレイトは、ルアルの方を向いた。
「しかしお前、さっきの全然ダメなんだな」
少し笑みを混ぜてルアルに言うと
「うるさい…!!」
ルアルから強烈なパンチを喰らいレイトは横に倒れた。
修正
12/21 誤字脱字、一部文を「この世界が使う騎士」「早口で説明」に追加・変更
第4話まで続くなんて思わなかった…
これからも最低週一投稿目指します。
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