22.決死の覚悟

小説
主要な登場人物
レイト 
 雷を操れる少年
 じいちゃんの言いつけで王都へと旅立つ
 また正義に生きることを目指している。
ルアル 
 魔法を使う魔術師の少女
 レイトとは旅の途中出会い、
 一緒に王都を目指す。

リモク村の登場人物
ルシィ 
 リモク村の宿屋を営む女性。
スバン
 ルシィのお父さん。
ニンバス 
 リモク村の木こりをやっている若い青年。
 実はルシィの幼馴染

魔物
ゴブリン
 基本はレイトと同じくらいの小さい魔物。しかし力はものすごく強く、ただの大人でも引けを取らない。大きいサイズもおり、そちらは力があまりにも強く成人男性が立ち向かっても、すぐにやられる。

大きな魔物
 大きなゴブリンよりもはるかに大きい5メートルはある魔物。
見た目もゴブリンとは全く違う。お腹は大きく丸く、その中央には大きな口がついている。またお腹の上には小さい顔がある。手は太く地面につくまで長い。大きなゴブリンを片手で握り潰すことまでできてしまう。

前回のあらすじ
 レイトとニンバスは大きな魔物を倒すため、松明の火を魔物の口へ放り込む作戦を実行する。
しかし作戦は失敗に終わるも、レイトの雷の一撃で魔物の右手を切り落とすことに成功する。
ニンバスはその光景を見て一喜一憂するも力を使いすぎたレイトは倒れてしまう。魔物はまだ生きているため絶体絶命の危機へ!

「くっ!!」

初めて使った威力の高い攻撃を、今日で3回も繰り出したレイトの体は、その衝撃に耐えきれず、全身に突き刺す痛みを露わにさせた。

「…うぐっ…やっぱり…3回が限界だ…」

倒れながらに言うレイトは体を起こそうとするも、痛みでうまく立ち上がれない。

魔物は悲痛な叫び声を上げている。

だが、右手を切り落とされただけで、なんら命に別状すらない。

魔物は小さい顔をキョロキョロと動かし、レイトを見つけると、重い体を動かしながら目の前に立った。

「…ちっくしょお…」

レイトは掠れた声で悔しそうに言う。

レイトを見下ろした魔物は、怒りをぶつけるかのようにお腹にある大きな口で叫び声を上げた。

「グオオオオオオオン!」

レイトの隣に転がっていた右手を左手で掴むと、そのまま右の方向へと投げ出した。

投げられた右腕は壁に衝突し、そのまま転がる。

どうやらレイトを仕留めるために、邪魔なものを排除したかったようだ。

レイトの位置を確認すると、魔物は大きな声を上げる。

「グオオオオ!グオオオオ!!」

喜んでいるのか、怒っているのかわからない。

ただレイトを仕留めるために鳴き叫んでいるのはわかった。

うつ伏せに倒れたレイトは歯を食いしばりながら、なんとか地面から立ちあがろうする。

しかし上手くできずに、また倒れ込んでしまう。

その姿を見たニンバスは、助けるために駆け寄ろうとする。

しかし魔物が左手を空高く振り上げる姿を見て、足を止めてしまった。

「っ!!」

振り上げた左手は、レイトを確実に叩き潰すための行動。

それを見てニンバスにある感情が呼び起こされた。

(あれがまともに当たれば…必ず死ぬ…)

恐怖。

ニンバスの頭の中には、その2文字が浮かぶ。

さきほど魔物に握り潰された恐怖がさらに拍車をかけた。

今の満身創痍なニンバスは、レイトをあそこから素早く助けることは不可能だ。

そう自分の心の中で考えてしまった。

今行けばレイトもニンバスも無駄死になるだろう。

そう思うと、恐怖で体が震え始める。

ニンバスは俯いた。

そして悔しそうに手を強く握りしめていた。

「なんでだ…この後に及んで…!」

目の前で倒れているレイトを見ているのに、己の恐怖に打ち勝てなくなってしまった。

「くそ…」

そう一言呟くと、レイトの叫ぶ声が聞こえた。

それはニンバスを心配する声だ。

「ニンバス!早く逃げろ!!」

自身が危険な状況でもニンバスの身を案じるレイトを見て、歯を噛み締めた。

そしてニンバスはレイトの方へと走り出す。

(俺は弱い!!)

そう心で思いながら続ける。

(レイトくんだけじゃない、ルアルちゃんだって命をかけてここまで来てくれて、俺たちを救ってくれたのに……なんで俺はこんなに弱いんだ…!そんな2人のためにルアルちゃんと約束したことも忘れていた…!)

ルアルとの約束を思い出した。
あんなに不安そうな少女の頼みを諦めようとした自分に苛立ちが募る。

「弱くてすまない…!もう俺は迷わないぞ!!」

体の節々が痛む。
死ぬかもしれない。
そんな恐怖なんてものは関係ない。
ただ歯を食いしばりながらレイトの元へ走る。

(必ず連れて帰ると約束したんだ!!レイトくんを絶対守って見せる!!)

ニンバスは、死ぬ気でレイトを救うべく、今ある全力で走ったのだ。

そんな駆け寄るニンバスを見てレイトは叫ぶ。

「…ダメだ!やられるぞ…!」

そう言いながら、なんとか膝をついて立ちあがろうとする。

しかし、魔物は待ってくれない。

「グフフフ」

喜んでいるかのように鳴く魔物を見上げると、そこには、左手を天に伸ばした姿が見える。

レイトはそれを見て死を覚悟する。

魔物は、振り上げた左手のひらを躊躇なくレイトの元へと振り落とした。

レイトの影が一瞬にして手のひらの影に包み込まれる。

レイトはただ目を瞑って、直撃するのを待つのみ。

しかし

手のひらはレイトを叩き潰すことはなかった。

ただ風圧がレイトの体を透き通り、一気に死の恐怖を落ちつかせた。

何事かとレイトは目を開けて、自身の後ろに立っている存在を目視する。

「ニンバス……」

そこには上から押しつけれた魔物の左手を、なんとか両腕で防いで耐えているニンバスがいた。

「がああっ…!!」

両腕に激痛が走る。

それでもニンバスは、顔を下に向けて、レイトの姿を見ると言う。

「…間に合って…よかった……はやく…‥逃げるんだ…」

苦しそうにそう言うニンバスにレイトは唖然としていた。

「なんで!逃げないんだ!!」

レイトがそう叫ぶ。
ニンバスは、魔物の左手の圧力に耐えきれず、右膝を地面につかせた。

それでもレイトの逃げれる隙だけは確保している。

「俺は…ルアルちゃんと……レイトくんを絶対…生きて返すと…約束した……」

そして辛そうに息を吸うと、最後の力を振り絞ってニンバスは言う。

「だから……!…必ず生きて帰ってくれ!!」

ニンバスは、今にも限界を迎えそうに歯を食いしばっていた。

こんな勇敢な姿を見てレイトは、ここからどうしたら良いかわからなくなっていた。

(絶対にニンバスを助けたい…でも…どうすれば…!)

そう悩んでいると、レイトの後ろで不気味な音が聞こえる。

それに気づいてレイトは振り向くと、魔物は、大きな口を開けていた。

そう、このまま2人とも食べてしま合わんばかりに、大きな口が開いていたのだ。

お腹を突き出すように、徐々に迫る大きな口。

悪臭を放ちながら、その中を見ると先ほどいた溶けかけた小さいゴブリンたちの手や体が無数にうじゃうじゃと蠢いている。

レイトの体は一瞬で寒気を感じさせる。

(どうすればいい)

そう一言思った時、レイトはあることを思い出していた。

この大きな魔物が吐瀉物を吐いた時、その吐瀉物がレイトの雷によって燃えたことを。

レイトは一つ大きく確信した。

「そうだ…!!もうこれしかないんだ…!!」

開いた大きな口が迫ってくる。

魔物は、口の方へ放り込もうと、左手の押し付ける圧力を強くする。

「ぐっ…!……もう耐えれないぞ…」

ニンバスがそう行ってレイトの方を見ると、そこには痛みに耐えながら片膝を突いて立ちあがろうとするレイトがいた。

(そうか…やっと決心してくれたか……)

ニンバスは、レイトの逃げる決心がついたと思い安堵した。最後に笑顔でお別れしよう。

そう思いながら、笑顔を無理矢理作ろうとすると、レイトは顔だけ振り向けて言う。

「ニンバス…ルアルとの約束は、俺を生きて返すことだけじゃない…」

そう言って一間置くと、レイトは叫んだ。

「みんなで生きて帰ることだ!!」

すると、レイトは真正面に飛び込んだ。

ニンバスは、その姿を見て目を丸くする。

なぜなら飛び込んだ先は、魔物の口の中だからだ。

「……レイト…くん!!」

そうして目の前の魔物は、レイトが口の中に入ると口を閉じたのだった。


ギリシャ旅行に行ってました。
メテオラとんでもなくてインパクト大です

コメント

  1. メテオラすごかったね😍配信してくれてありがとう😊
    小説は読んでません!!

    • 読んでから書け!

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