15.レイトとみんなの覚悟

小説
主要な登場人物
レイト 
 雷を操れる少年
ルアル 
 魔法を使う魔術師の少女

リモク村の登場人物
ルシィ 
 リモク村の宿屋を営む女性。
スバン
 ルシィのお父さん。
ニンバス 
 リモク村の木こりをやっている男性。
 実はルシィの幼馴染

魔物
ゴブリン
 基本はレイトと同じくらいの小さい魔物。しかし力はものすごく強く、ただの大人でも引けを取らない。大きいサイズもおり、そちらは力があまりにも強く成人男性が立ち向かっても、すぐにやられる。


前回のあらすじ
洞窟内で突然大きなゴブリンに襲われ、レイトが引き受ける形で戦うことに。その間ルアルとニンバスは、先へ進み、無事にルシィを見つけることができた。レイトは大きなゴブリンと戦うが、負けそうになる時に自身の技のコツを掴み雷の力で強力な一撃を放ち、倒すことに成功する。
しかし新たな魔物の叫び声を聞いたレイトはルアル達を追うために暗闇の洞窟を急いで走り出す。

走っている途中、先ほど聞いた音とは違う足音が鳴り響く。

何かが、歩いている。
その一歩一歩は重い音を立ており、そこから予想すると今までとは全く違う何かだ。

レイトはそう思いながらも、走り続けた。

青白い光がだんだんと大きくはっきりと見える。

何やらこの洞窟の大きな広場とは別に小部屋があり、そこから漏れ出ている光のようだ。

その小部屋の穴を目指して走る。
穴の手前までくると、レイトはその小部屋の中に入り、あたりに目を向ける。

すると、そこには青白く光照らされたルアルとニンバス、そしてニンバスに背負われているルシィがいた。

「無事だったのか!!」

レイトはそう叫んでルシィを見た。

それに対していきなり現れたレイトに、皆が驚きながら、ルアルは言った。

「レイト…無事だったんだ」

ルアルの不安な気持ちが少し晴れやかになる。

ルアルだけではなく、みんなレイトの安否が不安でいた。

ルシィは、とくに自分を助けるために命をかけていたレイトたちに、大きな罪悪感と不安に押しつぶされそうになっていた。

だからこそ無事なレイトの姿を見ることができて、涙を流していた。

「レイトくん、ありがとね」

そう一言ルシィが言うと、レイトは首を横に振った。

「いや、ルシィは美味しい飯をたくさん食べさせくれたからな!」

そう言ってレイトは笑った。
ニンバスもホッとした顔をして、レイトを見ていた。

ルアルがレイトに近づくと、指を刺して言う。

「あの音はあんたがやったの?」

それに対してレイトは首を縦に振った。

「うん!ルアルが教えてくれたからできたんだ!」

そういうとルアルは正直驚いていた。

「あんなの相当な力でしょ…」

目を丸くしたルアルだったが、すぐに笑みを浮かべた。

「やっぱり私の教えがよかったのね!」

ルアルは鼻を高くし、自信満々に答えた。
それに対してレイトはルアルに頭を下げて言う。

「ありがとうルアル!」

まっすぐなレイトのお礼に、なんだか少し照れくさそうになったルアルはそっぽを向いた。

少し和やかな雰囲気になったと思いきや、ふと何かを思い出したかのようにニンバスが話し出した。

「みんな無事に会えたのはよかったが、この足音やばいんじゃないか」

ずっと何か重い足音が鳴り響いている。
それに対して、ルアルは少し焦った顔をして答える。

「この足音、さっきの大きな鳴き声といい、きっとゴブリンなんかじゃない。もっととんでもない奴がいる…!」

それに対してニンバスは唾を飲んだ。

「くっ!どうする!」

それに対して、悩んでいるとルシィは困ったような顔をしていた。

「みんなごめんね」

そう一言謝ると、ニンバスは言った。

「謝るな!謝ることじゃない!」

ニンバスがそう言うとルシィは、小さく頷いた。
納得はしているものの、ひどく精神的に来ていようにみえたルアルは一刻も早くここから出ることを決める。

「ここから早く出ましょう」

その意見にニンバスもレイトも同意だった。
ここにいても、危険な状況が覆る訳じゃない。

するとレイトが気づいたように話し出す。

「さっきから足音が、近づいてないか?」

ズシンズシンと重い足音が、明らかにこの場に向けて大きくなっている。
不安と恐怖が全員の頭によぎった。

ただルアルもニンバスもこの事実に気づいていないわけじゃなかった。

お互い疲労が溜まっていて、無意識に気づかないふりをしてしまっていた。

現状、全員が正体不明の魔物に勝てる確証はない。とくにここまで有利に進むことができたルアルの魔術の行使には限界を感じている。

そのため外に出て魔物と鉢合わせした場合を考えるともはや誰も生き残れない。

だが近づいてるのなら、速やかにここから出て出口を目指すべきだ。

そうしなけれはま魔物がこの小部屋の穴の目前まで来ると誰も逃げれない状態になってしまう。

ルアルは悩み唇を噛んでいた。

そうしてようやく口を開いたのが、次の一言だった。

「どうしよう…」

ルアルはここに来る時と違って、完全に弱気になっていた。

自身の力が限界に近い。
みんなを救える確証がなくなってきている。

ニンバスもルシィも疲労を感じている。
周りにはどんよりとした空気が広がる。

そんな時レイトが口を開いた。

「俺が先に出て、魔物を惹きつける」

それに対して、ルアルが言う。

「…危険すぎるわ」

それに対して、レイトは強く言い返した。

「ここにきて誰も救われずに終わるくらいなら、俺が1人犠牲になってでもみんなを救う!だから俺が先にこの穴から出る!」

そんな選択を軽々しく言うレイトにニンバスは驚いていた。

(レイトくん、なんて強い子なんだ…)

そう思いながら、何もできない自分の情けなさに、ただただ虚しさと悔しさを感じていた。

ルアルはレイトの意見に納得できずにいた。

「そんなことしなくていい。私が魔術を使って…」

そう言うと、ルアルは杖を取り出し、目前で構えるも何やら動きが止まってしまった。

「だめ、有効な魔術を使うことができない。」

そのまま手を下ろしルアルはうつむいてしまう。
悔しそうに顔を歪めた。

それを見てレイトは言う。

「安心しろ、俺が守る」

そういうとレイトは剣を構えた。
覚悟を決めたレイトを見てニンバスは決心する。

(俺も弱気になってたらダメだ!!)

ルシィを背負いながらニンバスは、一歩前へ出て言う。

「…なんとか…ここまで無事に来れたんだ。きっと俺たちには神の加護ついてる!大丈夫さ!」

そう言って、ニンバスはみんなを元気づけようとした。
すると背負われたルシィもかすれた声で言う。

「ええ、みんなならできるから安心して」

弱々しく、なっているルシィだが、少しでも元気づけようと話す。

それを聞いたレイトは、より一層剣を握りしめる力を強めて、この小部屋の穴まで歩き出した。

巨大な足音が近づいてくる。
それを踏まえて、レイトは言う。

「一斉に出て、走り抜ける!きっと最初にルアルが火の魔術でゴブリンを倒した時の残り火が目印になるはずだ!」

レイトはみんなに背を向けて、穴が開いている方へと立つ。

それを見てルアルは、今の自分が情けなくなってきていた。

(何してるのよ私…)

弱気になっていた自分を思い返し、悔しくなってきた。
するとルアルは首を横になんども振る。
そして目を覚ます。

「ここからみんなで出るんでしょ、私のサポートがなければ、みんなだめだったはずよ!」

ルアルが自分に言い聞かせるように言う。
そしてレイトの横に立つ。

「私が支えるから、ここからみんなで脱出するわよ」

レイトがルアルの方へ振り向き言った。

「ああ!絶対にみんなで助かるんだ!」

レイトもルアルもニンバスも、そしてルシィも覚悟を決めた。

レイトがひと足先に、穴の外へ出る。
この場を照らす魔法の光の玉は、レイトの先を照らすようにルアルは仕向けた。
そうして後ろに続く。

それにルシィを背負ったニンバスが、順に続いた。

一行が出た先はただただ闇が深く、何か大きな魔物の気配が漂っている。

みんな無事に会えたのでなんとかよかった。

投稿サボりそうになりました。
今年中にこの話が終われるようにしたい!!

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