12.洞窟の中へ

小説

ルアルは洞窟の前のゴブリンたちを見て口を開いた。

「ざっと10匹以上、いるわね」

それに対してニンバスが驚きながらも、不思議そうに言う。

「なんでそんなにいるんだ?前に来た時は、こんなにいなかったはずなのに…」

ルアルは、ニンバスの疑問に答えることができなかった。

「私にもわかりません。何か警戒しているのかもしれません…」

特に何かするわけでもなく、ゲフゲフと奇妙に鳴きながら、周りを見回して立っている。

それを見てレイトが口を開いた。

「なあルアル、本当に魔物に気づかれずにいけるのか?」

それに対し、ルアルが答えた。

「試してはいないけど、バレないはずよ」

レイトはその答えに頷く。
そうしてレイトは剣を右手に持って、ルアルに言う。

「わかった。なら俺が問題ないか試してみる」

そう言って、魔物の元へと身を乗り出そうする。
そんなレイトの腕を掴んで、ルアルは止める。

「だめ、私が先に行くわよ」

そう言われてもレイトは顔を横に振った。

「だめだ、ルアルの魔術がなきゃ、ルシィを助けられない」 

そう言われても、ルアルは腕を離さない。

「私の魔術で、誰かを危険な目に晒したくない。自分の魔術の確証は、自分で確かめる」

そう言われても、レイトは納得しない。
レイトもルアルも、お互いのことを傷つけたくない一心で意見は対立していた。

そこへニンバスが口を開いた。

「いや、みんなで行こう。どちらにしろ君たち2人の一方がかけたらルシィを救えないと思う」

レイトもルアルもニンバスの方へ顔を振り向けた。
ニンバスは真剣な顔をして言う。

「俺には魔物を倒す力はない。だからもし気づかれた時は俺がなんとか囮になる」

ニンバスは、自分にはその役割しかないと思っていた。
それに対してレイトは、納得しなかった。

「だめだ、囮なら俺がやる」

レイトがそう言うがニンバスは、顔を横に振って答える。

「いや、君たちはルシィを助けてほしい」

キッパリと断ったが、レイトは納得できずに口を開こうとする。
しかしニンバスは言う。

「ここで悩んでる暇はない。みんなで向かってルシィを助けに行こう」

そう言われてルアルもレイトも少し黙った後、ルアルが答えた。

「ルシィさんの身のためにも急ぎましょう。」

レイトは、あんまり納得していなかったが、ここは我慢して、ルシィ救出を優先して考えることにした。

ルアルは、続けてレイトとニンバスに告げる。

「ただし注意があるわ。大きな音を出さない、相手に触れてはいけない。これだけは守って」

それに対して2人は頷いた。

注意事項を確認したルアルは、先に草むらから出ていくと、後ろを向いてレイトとニンバスに言う。

「私についてきて」

そう言われてニンバス、レイトと順に続くように歩き出し、縦一列で魔物の住処である洞窟の穴までを目指すことになった。

ゴブリンは、立って辺りを見回しているが不思議とルアルたちに気づかない。

(これが魔術の力ってことか)

レイトはそう思いながら、ルアルとニンバスの後ろをついていく。

ルアルは、自分の心臓がドキドキと高鳴っていながらも、冷静に進んでいく。

そうしてルアルハ、ゴブリンの集団に堂々と入るのではなく、前から見て右側の壁際をつたって洞窟の穴に入ろう考えた。

そこまで進み始めた。

進んでいる中、ゴブリンとの距離が近くなると、静かに大きく息を吸って吐いた。

慎重になりながら、道を歩く。

それでも心臓の高鳴りは、鳴り止まない。

これはニンバスもレイトも同じだった。

一歩一歩、ゴブリンの隣を歩く。

ニンバスは、近くのゴブリンのその醜悪な姿に唾を呑む。

(もしここでバレたら…)

バレればどんな酷い仕打ちがあるのか、そんな残酷なことを想像すると、何もないところでも足がすくみそうになる。

しかし、もしバレた時は自分が囮になると言う言葉を思い出した。
そして拳を強く握りしめる。

(俺ができるのはそれくらいだ…!)

そう強く思って歩いた。

レイトはいつでも戦えるように剣を取り出してついていく。

辺りを見回し、緊張もありながら、自分たちの姿がバレていないことに不思議だった。

ついそのまま剣を振りかざしてもバレないのではないかと、思いながらも、ルアルの忠告を常に考えて歩いた。

そうして無事にルアルたちは穴から右の壁際まで、到着する。

ルアルは、右手を壁につきながら、喋らずに左手で後ろのレイトとニンバス手招きした。

そのまま壁を伝って前に進むわよ!

そう言わんばかりに、手の平を前に押すような、ジェスチャーをする。

それにレイトもニンバスも頷いた。

そうしてルアルが進むと2人も後ろをつくように歩き出した。

壁付近にいるゴブリンは、何も気づかず、その後ろを歩く3人は、穴へと近づき、そのまま洞窟の中へと入っていった。

洞窟の中を少し歩き続け、外の光が薄くなるところまで歩く。

息を一息つくとルアルは、小声で喋る。

「洞窟内は響くから、大きな声はだめよ」

そう呟いて、レイトとニンバスは、頷く。そのあと2人は、すこし休むかのように座り込んだ。
ニンバスが口を開く。

「はぁ、無事に気づかれずに行けてよかった」

それに対してレイトも、頷いて答えた。

「うん、よかった」

レイトもニンバスも落ち着きを取り戻すために深呼吸をして、呼吸を整える。
ルアルは2人と違って、顔色を変えずに立っていた。

「なんとか間に合ってよかった。一応まだ姿隠しの魔術は、効いてるわよ」

そう言って、ルアルは続ける。

「でも、だからといって休んでる暇はない。ここはゴブリンの住処よ、いつ近くで遭遇してもおかしくない」

それを聞いて、2人は頷いた。
その後ニンバスは、自分の腰に巻いている松明を取り出して火をつけようとする。

それに対してルアルは、待ってと言わんばかりに、手を振った。

「灯りは私の魔術でどうにかします」

そう言って杖を取り出したあと、杖先から青白い光の玉が飛び出して、頭上を照らし出した。

あたりは青く光っており、3人をはっきり映し出したが、目前ほどしか照らすことができなさそうな弱い光だ。
それでも、ニンバスは、驚愕していた。

「ありがとう、なんて便利な力なんだ」

そうニンバスが言う。

ルアルは少し笑って、得意げな顔をした。
それでも、すぐに真剣な面持ちに変わると、洞窟を歩く準備を整えた。

「さあ、行きましょう」

そう言われて、ニンバスとレイトは立ち上がる。
その後そそくさとレイトは先に出る。 

「ここからは俺が先に歩く。ルアルとニンバスは後ろを見ていてくれ」

それに対してルアルは「私が先に歩く!」とでも言いたそうにしていた。
ただ、そんな言い争いをしても意味がないと考えたのか、素直に納得して、レイトの後ろに付く。

ニンバスもそれに続いて後ろにつくと、ルアルに一言言う。

「後ろは俺に任せてくれ」

ルアルは頷いた。

「わかりました。頼みます」

そしてここからは、いつ敵が来てもいいように、自身の武器を手に持つ。

レイトとニンバスは剣を、ルアルは杖を構え、洞窟内を進み始めた。


意外と12話まで書いてたことに驚いた。
このままスムーズに行きます。

*名前ミス指摘してくれた方ありがとうございます。編集しておきました 2024.9.15

コメント

  1. ・そう言われても、ルシィは腕を離さない。
    ルシィ→ルアルの間違い?

    ・そうしてルアルハ、
    ルアルは、

    間違い探しに集中してしまい、
    全然楽しめませんでした😿

    • ありがとうございます!

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