ルアルは洞窟の前のゴブリンたちを見て口を開いた。
「ざっと10匹以上、いるわね」
それに対してニンバスが驚きながらも、不思議そうに言う。
「なんでそんなにいるんだ?前に来た時は、こんなにいなかったはずなのに…」
ルアルは、ニンバスの疑問に答えることができなかった。
「私にもわかりません。何か警戒しているのかもしれません…」
特に何かするわけでもなく、ゲフゲフと奇妙に鳴きながら、周りを見回して立っている。
それを見てレイトが口を開いた。
「なあルアル、本当に魔物に気づかれずにいけるのか?」
それに対し、ルアルが答えた。
「試してはいないけど、バレないはずよ」
レイトはその答えに頷く。
そうしてレイトは剣を右手に持って、ルアルに言う。
「わかった。なら俺が問題ないか試してみる」
そう言って、魔物の元へと身を乗り出そうする。
そんなレイトの腕を掴んで、ルアルは止める。
「だめ、私が先に行くわよ」
そう言われてもレイトは顔を横に振った。
「だめだ、ルアルの魔術がなきゃ、ルシィを助けられない」
そう言われても、ルアルは腕を離さない。
「私の魔術で、誰かを危険な目に晒したくない。自分の魔術の確証は、自分で確かめる」
そう言われても、レイトは納得しない。
レイトもルアルも、お互いのことを傷つけたくない一心で意見は対立していた。
そこへニンバスが口を開いた。
「いや、みんなで行こう。どちらにしろ君たち2人の一方がかけたらルシィを救えないと思う」
レイトもルアルもニンバスの方へ顔を振り向けた。
ニンバスは真剣な顔をして言う。
「俺には魔物を倒す力はない。だからもし気づかれた時は俺がなんとか囮になる」
ニンバスは、自分にはその役割しかないと思っていた。
それに対してレイトは、納得しなかった。
「だめだ、囮なら俺がやる」
レイトがそう言うがニンバスは、顔を横に振って答える。
「いや、君たちはルシィを助けてほしい」
キッパリと断ったが、レイトは納得できずに口を開こうとする。
しかしニンバスは言う。
「ここで悩んでる暇はない。みんなで向かってルシィを助けに行こう」
そう言われてルアルもレイトも少し黙った後、ルアルが答えた。
「ルシィさんの身のためにも急ぎましょう。」
レイトは、あんまり納得していなかったが、ここは我慢して、ルシィ救出を優先して考えることにした。
ルアルは、続けてレイトとニンバスに告げる。
「ただし注意があるわ。大きな音を出さない、相手に触れてはいけない。これだけは守って」
それに対して2人は頷いた。
注意事項を確認したルアルは、先に草むらから出ていくと、後ろを向いてレイトとニンバスに言う。
「私についてきて」
そう言われてニンバス、レイトと順に続くように歩き出し、縦一列で魔物の住処である洞窟の穴までを目指すことになった。
ゴブリンは、立って辺りを見回しているが不思議とルアルたちに気づかない。
(これが魔術の力ってことか)
レイトはそう思いながら、ルアルとニンバスの後ろをついていく。
ルアルは、自分の心臓がドキドキと高鳴っていながらも、冷静に進んでいく。
そうしてルアルハ、ゴブリンの集団に堂々と入るのではなく、前から見て右側の壁際をつたって洞窟の穴に入ろう考えた。
そこまで進み始めた。
進んでいる中、ゴブリンとの距離が近くなると、静かに大きく息を吸って吐いた。
慎重になりながら、道を歩く。
それでも心臓の高鳴りは、鳴り止まない。
これはニンバスもレイトも同じだった。
一歩一歩、ゴブリンの隣を歩く。
ニンバスは、近くのゴブリンのその醜悪な姿に唾を呑む。
(もしここでバレたら…)
バレればどんな酷い仕打ちがあるのか、そんな残酷なことを想像すると、何もないところでも足がすくみそうになる。
しかし、もしバレた時は自分が囮になると言う言葉を思い出した。
そして拳を強く握りしめる。
(俺ができるのはそれくらいだ…!)
そう強く思って歩いた。
レイトはいつでも戦えるように剣を取り出してついていく。
辺りを見回し、緊張もありながら、自分たちの姿がバレていないことに不思議だった。
ついそのまま剣を振りかざしてもバレないのではないかと、思いながらも、ルアルの忠告を常に考えて歩いた。
そうして無事にルアルたちは穴から右の壁際まで、到着する。
ルアルは、右手を壁につきながら、喋らずに左手で後ろのレイトとニンバス手招きした。
そのまま壁を伝って前に進むわよ!
そう言わんばかりに、手の平を前に押すような、ジェスチャーをする。
それにレイトもニンバスも頷いた。
そうしてルアルが進むと2人も後ろをつくように歩き出した。
壁付近にいるゴブリンは、何も気づかず、その後ろを歩く3人は、穴へと近づき、そのまま洞窟の中へと入っていった。
洞窟の中を少し歩き続け、外の光が薄くなるところまで歩く。
息を一息つくとルアルは、小声で喋る。
「洞窟内は響くから、大きな声はだめよ」
そう呟いて、レイトとニンバスは、頷く。そのあと2人は、すこし休むかのように座り込んだ。
ニンバスが口を開く。
「はぁ、無事に気づかれずに行けてよかった」
それに対してレイトも、頷いて答えた。
「うん、よかった」
レイトもニンバスも落ち着きを取り戻すために深呼吸をして、呼吸を整える。
ルアルは2人と違って、顔色を変えずに立っていた。
「なんとか間に合ってよかった。一応まだ姿隠しの魔術は、効いてるわよ」
そう言って、ルアルは続ける。
「でも、だからといって休んでる暇はない。ここはゴブリンの住処よ、いつ近くで遭遇してもおかしくない」
それを聞いて、2人は頷いた。
その後ニンバスは、自分の腰に巻いている松明を取り出して火をつけようとする。
それに対してルアルは、待ってと言わんばかりに、手を振った。
「灯りは私の魔術でどうにかします」
そう言って杖を取り出したあと、杖先から青白い光の玉が飛び出して、頭上を照らし出した。
あたりは青く光っており、3人をはっきり映し出したが、目前ほどしか照らすことができなさそうな弱い光だ。
それでも、ニンバスは、驚愕していた。
「ありがとう、なんて便利な力なんだ」
そうニンバスが言う。
ルアルは少し笑って、得意げな顔をした。
それでも、すぐに真剣な面持ちに変わると、洞窟を歩く準備を整えた。
「さあ、行きましょう」
そう言われて、ニンバスとレイトは立ち上がる。
その後そそくさとレイトは先に出る。
「ここからは俺が先に歩く。ルアルとニンバスは後ろを見ていてくれ」
それに対してルアルは「私が先に歩く!」とでも言いたそうにしていた。
ただ、そんな言い争いをしても意味がないと考えたのか、素直に納得して、レイトの後ろに付く。
ニンバスもそれに続いて後ろにつくと、ルアルに一言言う。
「後ろは俺に任せてくれ」
ルアルは頷いた。
「わかりました。頼みます」
そしてここからは、いつ敵が来てもいいように、自身の武器を手に持つ。
レイトとニンバスは剣を、ルアルは杖を構え、洞窟内を進み始めた。
意外と12話まで書いてたことに驚いた。
このままスムーズに行きます。
*名前ミス指摘してくれた方ありがとうございます。編集しておきました 2024.9.15
コメント
・そう言われても、ルシィは腕を離さない。
ルシィ→ルアルの間違い?
・そうしてルアルハ、
ルアルは、
間違い探しに集中してしまい、
全然楽しめませんでした😿
ありがとうございます!